自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

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Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
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Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by Abbebe »

凸双曲面鏡の検査方法についてちょっと書かせていただきます。

世間話/「光学専門書におけるリッチークレチアン式反射光学系の扱い」にて紹介いたしました「レンズ光学の泉」(渋谷眞人著2023年12月発行)のP72に、
凸双曲面鏡検査用として「ヒンドル鏡」が提案されています。
「ヒンドル鏡」と呼ばれる球面鏡治具を用いることによって凸双曲面鏡のヌルテストが可能となります。

その昔(1996年頃)「天文ガイドインタラクティブ」のタカハシ製ベーカーリッチークレチアン式アストロカメラのメーカーからのインタラクティブ記事中に、球面鏡を使って凸双曲面鏡を検査する技術を開発、量産化を可能にしたと有ります。
これは正に上述「ヒンドル鏡」のことだと考えられます。
残念ながらその後タカハシはベーカーリッチークレチアン方式からは撤退してしまったのでヒンドル鏡についての説明がカタログ等に書かれることは無かったようです。

また吉田正太郎先生の本にはオフナー法と称してヌルコレクターを用いて凸双曲面を検査することが確立されていてそれはパーキンエルマー社(あのハッブル望遠鏡製造担当メーカー)で開発された!とあります。

話は飛びますが、木辺氏、星野氏の本にはカセグレン用の凸双曲面鏡は反対形状の凹双曲面治具を一旦製作してニュートンフリンジテストを行うと記述されていますが、
近年、西村製作所からの学会発表内容としてニュートンフリンジテストでは高精度の凸双曲面鏡の製造は不可能で有り、大型平面鏡を使用した望遠鏡全体のオートコリメーションテスト(ダブルパスヌルテスト)を行うことのみが高精度の凸双曲面鏡を製造可能とする唯一の方法であると発表されています。

もう一点紹介させていただくと、岡山の某反射鏡製作メーカーのHPにはカセグレン式は実星像テスト(シングルパスヌルテスト)のみが良い物を製造出来る検査方法であると書かれています。これは平面鏡が調達出来ない場合であって平面鏡が調達できれば上述西村製作所の発表内容に同意していると考えて良いと思います。

以上について私流に考えると、テストの為に専用治具やコレクターレンズを製作してテストすることが原理的に正しいとしてもその治具等の製作精度や、セッティング精度等でコストも技術も必要で一つ間違えるとハッブルのような失敗の可能性も有り、実際には出来るだけ実使用に近い状態で最低でも平面鏡のみを準備することで可能なテスト方法を採るのが最良なのではと考えられ、ダブルパスヌルテストを行って製作するのが良いのではないかと考えています。いかがでしょうか? 
以上が結論です。


もう一点だけ紹介させていただくと、凸面鏡は裏面(平面)反射によって凸レンズ+平面裏面鏡状態、すなわち疑似凹面鏡として検査することが可能で有り、1970年代頃に発表されています。
この場合、硝子が透明であること、屈折率が公表されていて均質屈折率が保証されていること等が必要条件であって材質的には溶融石英等が適用可能と考えます。
しかし実際の望遠鏡状態とは異なる光学系ですからやはり最終テストには不向きであって初期テストとして適しているのではないかと考えています。
最後に編集したユーザー Abbebe [ 2024年4月08日(月) 11:00 ], 累計 1 回
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
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Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by Abbebe »

凸双曲面鏡裏面テストですが、凸面側から入射させて裏面(平面)で反射させるのでは無くて、平面側から入射して凸双曲面の裏面にて反射させてテストを行うのが正解ですね!
こちらでないと検査精度が出ないようです!失礼いたしました。
屈折率と中心厚が既知であれば「みなしパラボラ係数」が算出可能で、すなわち輪帯毎移動量(修正量)が算出され、凹面鏡と同様に輪帯毎移動量測定が可能になる訳です。

それから「ヒンドル鏡」ですが、以前「M」さんから御紹介いただいた「Parks and Shao(1988)」において説明されておりましたね。
大変失礼いたしました。

「レンズ光学の泉」P72のヒンドル鏡の説明図です。
P1050178(2).JPG
「M」
記事: 27
登録日時: 2023年7月29日(土) 19:25

Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by 「M」 »

Abbebeさん こんにちは
Abbebe さんが書きました: 「ヒンドル鏡」ですが、以前「M」さんから御紹介いただいた「Parks and Shao(1988)」において説明されておりました
はい。それから『木辺成麿,新版 反射望遠鏡の作り方,1968』 図 162 B(p.242)の
「深い球面鏡」というのが「ヒンドル鏡」(「ヒンドル球」)ですね。
Abbebe さんが書きました: また吉田正太郎先生の本にはオフナー法と称してヌルコレクターを用いて凸双曲面を検査することが確立されていてそれはパーキンエルマー社(あのハッブル望遠鏡製造担当メーカー)で開発された!とあります。
「オフナー法」は凹鏡(主鏡)用ではないでしょうか?
『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』 の図8.30(p.242)は、放物面(凹)鏡についてですね。

※「The Hubble Space Telescope optical systems failure report」(pdf)は
※趣味者にとっても興味深いものです。https://ntrs.nasa.gov/search.jsp?R=19910003124
※※同URLに、「Executive Summary」の「Summary」あり。

※(Reflective null correctorを検証するための)inverse null correctorと
※(vertex Rocを測定するのが主目的の)Refractive null corrector(オフナー法?)の
※両方からの「赤信号」が、(それらのほうが間違っているとされて)無視された...と
※いうこと、そのような判断がなされた背景(事情)が報告されています。

Abbebe さんが書きました: 話は飛びますが、木辺氏、星野氏の本にはカセグレン用の凸双曲面鏡は反対形状の凹双曲面治具を一旦製作してニュートンフリンジテストを行うと記述されていますが、
(凹面の)「球心に光源をおく/球心で観察する」のだよ、と教えてもらったのは、
だいぶ後でしたねぇ...。
※その場合は「フィゾー」配置ということになりますか。
Abbebe さんが書きました: 近年、西村製作所からの学会発表内容としてニュートンフリンジテストでは高精度の凸双曲面鏡の製造は不可能で有り、大型平面鏡を使用した望遠鏡全体のオートコリメーションテスト(ダブルパスヌルテスト)を行うことのみが高精度の凸双曲面鏡を製造可能とする唯一の方法であると発表されています。
※どんな論法(論証方法)なのでしょうね? それとも事例研究的な発表なのかしらん?
※この方法は『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』 の図8.36(p.199)
※(= 西ドイツ・カール・ツァイス社のC.キューン...(の)報告)
※と等価だと思うのですが...。
※ところで同ページに「ヒンドゥル法」の図があります。が、本文では簡単に
※触れられているだけ...。

Abbebe さんが書きました: 凸面鏡は裏面(平面)反射によって凸レンズ+平面裏面鏡状態、すなわち疑似凹面鏡として検査することが可能で有り、1970年代頃に発表されています。
この場合、「双曲平凸レンズの離心率」が硝材の(相対)屈折率に等しければ、
(真の)ナルテストになるわけですね:
※双曲平凸レンズは、たとえば、『吉田正太郎,光学機器大全』 図 5-8 双曲面レンズ(p.242。)
Abbebe さんが書きました: 凸双曲面鏡裏面テストですが、凸面側から入射させて裏面(平面)で反射させるのでは無くて、平面側から入射して凸双曲面の裏面にて反射させてテストを行うのが正解ですね!
はい。共役点に光源,ナイフをおく... 試しに自分でも計算をしてみました。
機会があれば投稿します。
※※※※※
Abbebe さんが書きました: テストの為に専用治具やコレクターレンズを製作してテストすることが原理的に正しいとしてもその治具等の製作精度や、セッティング精度等でコストも技術も必要で一つ間違えるとハッブルのような失敗の可能性も有り、実際には出来るだけ実使用に近い状態で最低でも平面鏡のみを準備することで可能なテスト方法を採るのが最良なのではと考えられ、ダブルパスヌルテストを行って製作するのが良いのではないかと考えています。いかがでしょうか? 
私見を書き始めたのですが、まとまりません。これも、もう少し整理ができたら
投稿いたします。
「原」
記事: 245
登録日時: 2023年6月14日(水) 19:16

Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by 「原」 »

宇治天体精機さんは50cmクラスは副鏡が無メッキでも1~2等星ならナイフエッジテストできるので、仮組して規定の焦点位置での状況を観察して副鏡の修正研磨するそうです。いろいろ試したが、実用状態での試験が検査治具の誤差や組立誤差を考えなくても良いので、結局これが一番だったとか。
「M」
記事: 27
登録日時: 2023年7月29日(土) 19:25

Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by 「M」 »

「原」さん こんにちは
「原」 さんが書きました: 宇治天体精機さんは50cmクラスは副鏡が無メッキでも1~2等星ならナイフエッジテストできるので、仮組して規定の焦点位置での状況を観察して副鏡の修正研磨するそうです。いろいろ試したが、実用状態での試験が検査治具の誤差や組立誤差を考えなくても良いので、結局これが一番だったとか。
この段階に入る前の工程は、どうなっているでしょうね?
凸球面を作る:-
・およそのRoc(曲率半径)を決めるのは砂掛けでやる?
   ※鉄(金属)皿を使うのでしょうかね。
・砂目をとりながらRocを追い込む...。

ほぼ球面から、いきなり「実用状態」の修正研磨を繰り返すのでしょうか?
※その辺が「営業秘密」なのでしょうね。
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡

投稿記事 by Abbebe »

苗村氏がオートコリメーションフーコーテスト(=ダブルパスヌルテスト)を実施している写真を見つけました!
F3mirrorさんのBlog「反射望遠鏡の自作状況のブログ」にもダブルパステスト(RFTによる)実施中の写真が存在しています。
(今回リンクは控えておきます。20200515です)
P1050300(6).JPG
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