リッチー・クレチァン望遠鏡の理論(『吉田正太郎,新版 反射望遠鏡光学入門』(他))

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「M」
記事: 97
登録日時: 2023年7月29日(土) 19:25

Re: リッチー・クレチァン望遠鏡の理論(『吉田正太郎,新版 反射望遠鏡光学入門』(他))

投稿記事 by 「M」 »

みなさん こんにちは

このトピック(スレッド)の出発点に戻りましょう。
「リッチー・クレチァン鏡が満足すべき条件」の略図です。
※『天文アマチュアのための 新版 反射望遠鏡光学入門,2005』 p.234の図9.5
Fig95_Big_3.svg.jpg
・物点は、向かって左の無限遠にあるとする。

・物点から光軸に平行に入射した光線は、主鏡面上の点「I」で反射、
  副鏡面上の点「I’」でさらに反射して光軸と「焦点」で交差。

・光軸をx軸とし、焦点を原点(0,0)とする直交座標(xy座標)を考える:
  x軸は左方向を「正」方向、y軸は上方向を「正」方向とする。

・点Iの座標値は(x,y)。

・合成焦点距離を1とする。

・「主鏡面頂点と副鏡面頂点の距離」を「e」、
 「副鏡面頂点と焦点の距離」を「m」、
 「物点からIへの光線」と「IからI’への光線」がなす角度を「2i」、
 「IからI’への光線」と「I’から焦点への光線」がなす角度を「2i’」、
 「I’から焦点への光線」と光軸がなす角度を「u」、
 「IからI’への距離」を「l」、 ※「L」の小文字
 「I’から焦点への距離」を「ρ」 とする。

すると、アプラナート2枚鏡系の満足すべき条件は、次のとおり。
ChretienODE2.svg.png
 
(1)は、光路長一定の条件。
 u -> 0 とするとき
 x -> (m-e)
 ρ -> e + (m-e)
 l -> e
  ∴
 -x + ρ + l -> 2*e

(2)は、正弦条件。

(3)は、『物点からIへの光線」が光軸と平行』:
 物点が無限遠の条件。

(4)は点Iのx座標の条件。ここで
 ρ cos(u): 赤で示す直角三角形の底辺長、
 l cos(2i): 緑で示す直角三角形の底辺長。

(5)は点Iのy座標の条件。ここで
 ρ sin(u): 赤で示す直角三角形の高さ、
 l sin(2i): 緑で示す直角三角形の高さ。

つぎに吉田正太郎先生は
「極座標では、非球面系の補助定理(lemma)によって...」と
「(6)」(7)を導入しています。 
※よく知られた補助定理なのでしょうか?
※※このlemmaに関連するtheoremは??
※※もしかするとChrétienが、そのように記述しているのかしら?

幸いにも、この補助定理の「証明図」を見つけることができました。
Fig95_DeltaRho-A.svg.jpg
Lynden-Bell, Exact optics: a unification of optical telescope designの
Fig1(b)

※検索すると、いくつか少しずつ違う「版」が見つかりますが
※Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Vol.334,4,
※https://academic.oup.com/mnras/article/ ... 87/1033326
※...が「本家」なのでしょうか。

この論文が、
viewtopic.php?p=3910
で触れた、「別の論文」です。 その スレッドでガラクマさんに言及していただいたのが
きっかけで(その時点で1年以上寝かせていた)「探求」を再開したのでした... ... ...

(続く)
「M」
記事: 97
登録日時: 2023年7月29日(土) 19:25

Re: リッチー・クレチァン望遠鏡の理論(『吉田正太郎,新版 反射望遠鏡光学入門』(他))

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(続き)

この補助定理の証明、※絵解きにしばらくかかりましたけど...
もう1本補助線を入れるとわかりやすくなります。
Fig95_DeltaRho-B.svg.png
I’(x,y)付近を拡大。 I’での法線(cyan)に垂直に
補助線(orange)を引いた。

「黄緑の直角三角形」と「桃色の直角三角形」は相似なので
黄緑の直角三角形の頂角は「i’」

u -> u + du とするとき
ρ -> ρ + dρ

ρ*du: 「黄緑で示す直角三角形の底辺長」※半径ρ,中心角 duの円弧長。
dρ:  「黄緑で示す直角三角形の高さ」※半径の増分。
∴
tan(i’) = dρ/(ρ*du) = 1/ρ * dρ/du
    
※(1)..(7)の連立が「微分方程式」になるのは、この(7)のお陰ですね。
※※解が極座標表現になるのも同様。

これは、
 『原点を「焦点」に置いた極座標(ρ,u)で考えたとき
  焦点から発した光線が、ある曲線上の点I’で反射する際の
  「法線の角度」i’とρ(=原点/焦点からの距離)の関係を規定する』
方程式、とでもいいましょうか...。 

例 1 i’ == 0 の場合  ※trivialな例!
1/ρ == 0 または dρ/du == 0
※※ 1/ρ == 0 (この物理的な意味はなんでしょうねぇ...)は 置いといて
dρ/du == 0ということは、ρ(u) = const。
これは球面鏡ですね。

例 2 i’ == u/2の場合 ※焦点から発した光線群が平行になる。下図参照
px-2.py.svg.png
 2次曲線の極座標(ρ,u)での方程式を予習しておきます。

rho(u)=ROC/(1+e*cos(u))
 circle: e = 0
 ellipse: 0 < e < 1
 parabola: e = 1
 hyperabola:1 < e
但し、
 極座標の原点は2次曲線の焦点
 「ROC」は頂点曲率半径
 「e」は離心率
※※Chrétienが「主鏡副鏡距離」に使った「e」とは関係なし。

微分方程式を「Maxima」で解いてみますと

コード: 全て選択

(%i1) display2d:false$
(%i2) ode2(rho(u) = 'diff(rho(u),u)/tan(u/2), rho(u), u);
(%o2) rho(u) = %c*sec(u/2)^2
(%i3) subst(%c=ROC/2, rhs(%));
(%o3) (ROC*sec(u/2)^2)/2
(%i4) trigreduce(1/%);
(%o4) 2*(cos(u)/(2*ROC)+1/(2*ROC))
(%i5) 1/ratsimp(%);
(%o5) ROC/(cos(u)+1)
※(%i<n>)に続く部分、行末までが入力。(%o<n>)で始まる行が出力。
※入力中「%」を単独で使うと、直前の出力をあらわす。
※「%c」は、「ode2()」によって得られる、微分方程式解の中の任意定数(「積分定数」。)

微分方程式の答えは「(%o2)」で出ているわけですが、あとは「形式を整え」て
(%o5)で、2次曲線方程式のe=1の場合(i.e.放物面鏡)となることが示せました。

 ところで「(%o3)」で出てくる「sec(u/2)^2」を書き換えると「1/(1-sin(u/2)^2)」。
「sin(u/2)^2)」て、どこかで見たことがありますねぇ...。 (Chrétienによる解での「t」)

   ※

 「以上7本の連立微分方程式を解けば,鏡面の形状が得られますが,これには高度の数学
力が必要で,式の誘導は,さすがクレチァンと感嘆します.」
※『天文アマチュアのための 新版 反射望遠鏡光学入門,2005』 p.236

 式の誘導に興味がある方は、『Untersuchungen zur geometrischen Optik. II』を
参照されることをおすすめします。式の誘導を段階を追って説明してくれています。
式の変形を追うのは、高校数学の知識でokでしょうか。 1階線形微分方程式の解法は、
受験数学の範囲のようです...。
※「高度の数学力」というのは、「なぜ、式をそのように変形すると解けるのか?」の部分を指すのでしょうねぇ。
※細かい話ですが、先に「副鏡面の形状」が求まる。それの結果を使うと
※「主鏡面の形状」も求まる。 副鏡の式のほうが若番となっている理由ですね。
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