ページ 1 / 2
焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月07日(水) 23:51
by ガラクマ
焦点距離910㎜ってどこからきたんでしたっけ? お詳しい方に教えて頂いたと思っていたのですが、思い出せません。
口径60㎜だったら約F15は900㎜、他の口径でも910㎜が選ばれております。
木箱の時代、三六板の規格に合わせたと考えたら3尺、確かに910㎜です。
ご存じの方がいらしたら教えてください。ただ、正解は無いかもしれません。
みなさんは、どう思いますか?
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月17日(土) 17:47
by 青色つきこ
Fナンバーを基準に考えれば、910mmは不思議な規格ですねぇ。
アストロ光学(株)には、f=910mmは有効径40mmのR型、60mmのS型、76mmのH型がありました。
910mmはアストロ光学(株)に端を発しています。
アストロ光学(株)の本社では、望遠鏡の設計(小島修介氏)、レンズ作製(堀口恵助氏)、組立・検査を行っていました。
両氏はアストロ光学(株)を去り、堀口恵助氏は1958年3月に堀口光学(株)を設立、小島修介氏も1958年3月に同僚とともにマクロ光学工業(株)
を設立しました。
木箱のサイズに拠るという話は私もどこかで聞いたか見た記憶はありますが、どこだったのかは思い出せません。
アストロ光学(株)の創立メンバーにか小林民八郎という方がおられますが、旭光学(前野町)の側で中央木材工業という家具工場を営んでおられました。アストロ光学(株)の木箱、三脚はここで製作されたものと考えています。
なお、現在ある同名の会社とは関係性はみられません。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月19日(月) 16:17
by ガラクマ
小島氏、堀口氏らの出身の五藤光学は900㎜でしたね。
ビクセンも古老さんの話では、当初は堀口光学さんのレンズを使っていたとのこと。
採用したのはアストロというか堀口氏だったのでしょうか。
焦点距離って、焦点を結ぶ位置は明確なんですが、レンズの厚みのどの部分から計るかというのが面倒なんですよね。
900㎜を作ろうとして、先代の日本望遠鏡工業会にいって測ってもらったら910㎜だったとか。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月21日(水) 22:49
by 青色つきこ
f=910mmの派生の話として
アストロ光学工業(株)の1959年資料を見ると、ブランド名はRoyalであり
その製品の型番は屈折式にRを、反射式にはLをつけました。
自作用D=40mmキットはf=910mmからf=900mmに変更、40mm屈折はf=500mmのままです。
60mm屈折はf=1200mmのR61赤道儀式とR62経緯儀式になり、アストロ光学S5に相当するものは無くなりました。
76mm屈折はR70の名称でアストロ光学H2に相当し、f=910mmのままです。
なお、アストロ光学工業(株)は新型S5としてD=60mm f=910mmのものを1968年に発売しました。(モータードライブに対応)
もちろん、それ以前にもS5らしきものはありますが、型番を特定できません。(資料不足)
いつ、復活したのかもわかりません。(1959年のカタログには記載なし)
そもそも、どうしてSを付けることになったのか、屈折式はRにしたのに、どうしてなのか。
また、アストロ光学工業(株)はタスコ・ジャパンを通じてTASCOにTasco 60mmとしてf=910mm、後にf=1000mmのものを輸出しました。
TASCOからすれば、
1955年~1957年? Tasco 60mm 152倍モデル (アストロ光学(株))
1958年~1959年? Tasco 60mm 228倍モデル(202倍?) (マクロ光学工業(株))
1959年?~ Tasco 60mm 304倍モデル (アストロ光学工業(株))
1960年?~ Tasco 60mm 7TEシリーズ (アストロ光学工業(株))
後に東和光器製作所に取引先を変更。タスコ・ジャパンは、Tanross Supply Co.の駐在員であった松居氏によって
1962年に新宿区で設立されました。タスコ・ジャパンは1964年当時から既に東和光器製作所と取引関係にありました。
1958年以降もアストロ光学(株)のS5と同スペックの類似モデルは板橋区界隈の製品に多く見られます。
アストロ光学(株)は、その協力工場を板橋区界隈に持っていたことの証左とも言えます。
f=910mmの由来については堀口氏に聞くのか一番でしょうが既に鬼籍に入られています。
堀口光学は、保谷硝子の系列会社だったようです。もともとは保谷硝子がアストロ光学(株)の株式をもっていたから
でしょうが、堀口氏が堀口光学を設立した時に出資したのでしょう。
まだ、調査中でもありますが、一応、ご報告しておきます。
※タスコ・ジャパンは同名の会社はありましたし、ありますが、松居氏のタスコ・ジャパンとの関連はみられません。
※アストロ光学工業(株)は1958年に設立されましたが、後にチューエツグループの傘下に入り、埼玉県上尾市に移転
、その後チューエツグループから独立し、現在に至っています。
※ビクセンのポラリス2型はアストロ光学のH2型の流れを、ポラリス1型はS5型の流れにあると考えられます。
アストロ光学H2型・S5型とも光軸修正装置もないし、フードはかぶせ式ですし。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月22日(木) 10:09
by ガラクマ
横道ついでですが、屈折がRで反射がLの番号については、聞いたわけではありませんが、
屈折望遠鏡 REFRACTOR (Refractive Telescope) のR
反射望遠鏡 REFLECTOR (Reflective Telescope) のL
と思ってます。
青色つきこさんのお話から、少し調べてみました。
S5型についてはできたのは1956(昭和31)年でしょうか。
1956年の第7版のカタログには見つからず
(このカタログ、私がスキャンしたはずですが原本見つからず、なぜか片面のデータしかありません。貴重な情報はスキャンしているはずですが)
それとは別に同年のS-5型の取説があります(例のファインダー脚が特殊なやつです)。
当時はRとかLに統一されていませんでした。アストロ光学工業になってからでしょうか。
また、気が付くのが口径が40㎜でも50㎜でも76.2㎜でも焦点距離910㎜です。
そんなことから、やっぱり板の規格(三六板 910㎜×1820㎜)から来たのでしょうか?
焦点距離910㎜の歴史を調べることで、堀口光学やアストロ光学、天体望遠鏡レンズメーカーの歴史に迫れるかもしれません。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月23日(金) 07:33
by 青色つきこ
アストロ光学(株)の型番の取り方は、最初はASTRO、つまりA型、S型、T型、R型、O型、続いてH型K型N型等があります。
アストロ光学工業(株)は、1958年2月の労働争議(新聞にも載りましたし結構、世上を騒がせたようです)、アストロ光学(株)の倒産騒ぎ等で
アストロ光学(株)とは厳に一線を引いていたところですし、それもあって製品の型番も変えたと考えています。
それなのに、なぜ、S型だけ残したのか。S型は、アストロ光学の代表的製品だったからなのか。ネームバリューがあったのか。
ところで、1950年代、レンズはどこの製品が使われていたのか。アストロ光学(株)は、どうだったのか。考えていくときりがないのですが。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月23日(金) 14:39
by SAC
1ヤード=36インチ=91.44センチからでは?
3インチ=76.2ミリとか
輸出中心の時代 インチにあわせていたのかも。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月23日(金) 16:31
by ガラクマ
SACさん。面白いお話です。可能性ありますね。
ここでポイントは、尺貫法やヤードポンド法(インチも含む)が使用禁止になったのは1958年の計量法の改定ということです。
そう、アストロ光学が倒産した年です。ですので、910㎜が生まれたのはそれ以前です。
逆に1インチ=25.4㎜=1/12フィート=1/36ヤードが明確に定義されたということで、先のカタログでの口径76.2㎜のH2型の表示とかになったのでしょうか。(それ以前から変わってないが、㎜換算が周知されたということで)
口径60㎜のF15が900㎜というところから910㎜がなぜ?というところからから始まりましたが、尺貫法やヤードポンド法のお話からだと900㎜である必然性も思ったほどなかったのかもしれません。
古くは口径はインチを基準に、2インチが50㎜近辺、3インチが75㎜近辺という感じで作られてきましたが、それだと口径60㎜という半端な数字が入ってきたことが雑念だったかもしれません。
五藤光学の社史だったか?では、あるトラブルを元に日本光学から大量の光学材料(直径60㎜)を得てレンズにして望遠鏡を作ったのが、それ以降の国産屈折望遠鏡口径60㎜の原点とありました。
そう考えると、当初はクラウンとフリントガラス、両方揃っていたげど、クラウンが不足したので苦肉の策として青板にしたとか、いろいろ想像が膨らみます。話横道ですが。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月24日(土) 16:17
by 青色つきこ
910mmについて、古スコの過去ログに「アストロ光学R-70型屈折望遠鏡」がありました。
投稿者はatoyan様、既に12年以上前のものですが、アストロ光学工業(株)のR-70です。
ファインダーの取付部が接眼体にあるので、アストロ光学工業(株)設立当初のR-70ではありません。
赤道儀も改良されており、910mmの作られた最初の時期のものではありませんが、2010年時点では貴重な情報だったと思います。
その中でShinba様が
「確か昔、天文ガイドの別冊で読んだと思うのですが、この910mmという寸法は格納箱に使う木材の定尺寸法から来ていると
いうハナシが記憶にあります。
天体望遠鏡テストの冨田氏が、メーカーはいろいろ苦労しているのも知らず、勝手を書いたというようなことを記していた
中にあったように記憶してます。
この定尺寸法から逆算して製品の仕様を決める手法は、自分の仕事に関してちょっとした「目から鱗」でした。最近では
新規製品の設計には、テストの方法から逆に仕様を決めることを考えたりしてます。今までの考え方からすると逆方向に
走るわけです。」
と記しています。
因みに、アストロ光学(株)S-5の発売は1955年です。
S-5は、AkronではSpace Scope 151として、Tanross Supply ではTasco 60mm (通称152×モデル)として販売されました。
とある資料にTanross Supply が横浜からマイアミに双眼鏡〇〇箱を輸入した記述があります。
私のTasco 60mm も横浜からマイアミに行ったのか? 木箱をどうやって輸送した?、それらに非常に興味を覚えます。
Re: 焦点距離910㎜
Posted: 2023年6月24日(土) 23:40
by ガラクマ
青色つきこさん。いつもながら鋭い情報ありがとうございます。
Shinbaさん、懐かしいですね。今もお元気なんでしょうか。
この記事ですね。
どなたがどういう話の流れで言ったか、知りたいですね。原文を読んでみたいものです。
S5型は1955年でしたか。確かに1956年の取説が第3版になっていたので、それ以前かもしれないと思っておりました。
どの望遠鏡が、最初に910㎜を採用したのでしょうか?
また、歴代の箱の大きさも知りたいものです。
焦点距離910㎜については置いといても、箱の大きさで910㎜(以下)に仕上げたいのは理解できます。
昔、スピーカー作りに少し興味がありましたが、作り方の本を見ても、三六板(サブロク)をいかに有効に使うかでサイズが決まっておりました。
アマチュアならまだしも、業務では余剰木材が産廃になってしまいますので、できるだけ産廃は減らしたいものです。
時間があったら、徹底的に箱の寸法とか、歴代の望遠鏡の焦点距離とか調べたいですね。いろいろ分かるかもしれません。