自作プラネタリーエクステンダーレンズ

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Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by Abbebe »

以前、このスレッドで私の自作機材として、電視ファインダーと青ハロキラーフィルターを紹介させていただきました。
今後も私の自作機材についてこのスレッドで紹介させていただきたいと思っています。

今回は惑星拡大撮影用自作プラネタリーエクステンダーレンズについて紹介させていただきます。
F10程度の対物レンズを2.0倍~2.5倍(F20~25)に拡大して、木星、土星、火星等の惑星を拡大撮影するのが目的の
プラネタリーエクステンダーレンズで、視野数の大きさ(周辺性能)については割り切っており、眼視用は非対応の
あくまで惑星撮影専用に特化したノンテレセンタイプのいわゆるバローレンズです。

惑星の拡大撮影においてADC(大気分散補正プリズム)の使用は大前提になると考えられる為、このエクステンダーレンズは
ZWO社製ADCのφ31.7差込雄部分を取り外して代わりに取り付けることによってADC一体状態となり、その状態で望遠鏡の
φ31.7差込雌部に差し込んで使用する方式としました。

そのままZWO ADCにZWO ASI等のCMOSカメラを取り付けると拡大率2.0倍、
ZWO ADCとCMOSカメラの間にL40mmのT2ネジ延長筒を挿入することで拡大率2.5倍となります。

自作の内容としては、まず私が設計を行ない、2枚のレンズ玉、3点から成る鏡筒部品の部品図面の製作についても私が行い、
それぞれレンズ玉専門の業者と金属加工専門の業社に依頼し、出来上がって来た部品による最終組み立てを私が担当した
ということになります。

2枚のレンズ玉の内の1枚は最新の高屈折率ED硝子、いわゆるガドロンタイプ硝材を採用しています! 
鏡筒部品は全てアルミ製で黒アルマイト加工です。

法人でないと相手にしてもらえない業者も多いのですが、個人でも相手にしてもらえる親切な業者も存在していて
そういう業者に依頼しています。

私のφ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡f2850mmF9.5(自作)に使用すると
f5700mmF19 或いはf7125mmF24となります。

木星は2.5倍拡大(f7125mmF24)仕様、カメラはZWO ASI662MCにて2023年10月22日に撮影したものです。

なお、φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡(自作)の詳細についても近々にこのスレッドにて
紹介したいと考えています。
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(^0^)コメト
記事: 161
登録日時: 2023年6月23日(金) 14:28

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by (^0^)コメト »

Abbebeさん、曇天会議の皆様こんにちは

レンズまで特注する方が居るんでつか!(^0^8
あまりに凄過ぎて声も出ません。。これはプロだな!
設計からとなると現場作業だけでは済まされません。

良く、レンズ枠とかを注文する方は見掛けますが、これだって普通に
やれることではない気がします。
流用とかになる例が多いと思います。

流石にそれで写した天体は素晴らしいものがあり、努力の結晶。
ついつい画像より器材に目が行く(^0^)ですが、仕方のないとこで。。
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by Abbebe »

(^0^)コメトさん、どうも有難う御座います。
私は学生時代に吉田正太郎先生の天文アマチュアの為の望遠鏡光学を読んで星見よりも光学系関係に興味が移ってしまって結局就職後は実は仕事としてレンズ製品の商品化業務に携わっていました!(カメラ関係ですが)
望遠鏡関係は仕事としては全く未経験なのですが、その後天文ガイドに連載されていた入門・天体望遠鏡光学をずっと読んでいました。これはアマチュアが自分で光学系を自作することを勧めている内容だったと思われるので、結果として私はそれに上手く乗せられたことになりますね。
定年退職後に本格的な望遠鏡が欲しくなった時に、機材購入沼に入って結構なお金を使うよりも思い切って世界に1台だけの自分仕様の光学系を1台のみ製作しようと決めて製作に取り掛かったのがφ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡とそれ用のプラネタリーエクステンダーレンズとレデューサーレンズであり、おかげ様で完成して稼働させることが出来ています。

今回はそのプラネタリーエクステンダーについて紹介させていただいた訳です。

それでは紹介し忘れた内容について説明させていただきます。
光学シミュレーションソフトはOPTASデモ版を使っています。
OPTASは元々約30万円で正式購入したソフトなのですが、現在は会社も無くなってしまってWindowsのアップグレードで、ある時突然動かなくなってしまったのですが、データファイル機能のみ削除されたOPTASデモ版が現在のWindows10上でもなんとか動作していてそれを使っています。自動設計機能もちゃんと働きます!

近年フリーソフトの光学シミュレーションソフトも何種類か出回っていてそれらは自動設計機能までは付いていないのですが、望遠鏡程度のハンドメソッド設計であれば十分可能だと思います。私のお薦めはPOPSです!

CADソフトはフリーソフトのJw_cadを使っており、いわゆる2次元の機械設計製図を作成しています。
ハメアイとかの多少のノウハウはやはり仕事の経験が生きているのかも知れないです。

ということで何卒よろしくお願いします!
(^0^)コメト
記事: 161
登録日時: 2023年6月23日(金) 14:28

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by (^0^)コメト »

Abbebeさん、曇天会議の皆さん

なるほどどうも嵌ったお仕事においでだったようで、羨ましいです。
(^0^)も似たようなとこがあり、最初のレンズ関係の会社が潰れて
行き先を失い、近隣の町で職探ししたら町工場的な面白い光学関係社に
巡り合いまして、40年間居ついてしまいました。

主に研究所関係の係になり、いろんな光学機械に触れておりました。
パソコンが普及してからは「teleopt」と言う天ガ販売のアプリを使い、
これもwin版で動くのまでやりました。

OPTASも購入希望がありましたが、最後まで敵わずで海外のをレンタル
したりしてましたがムズく、国内でレンズ設計をやる方が居て外注でした。
その内、光学系よりも電気系とか制御系に主力が移ったので、そちらに
力点が移り、auto_cadを導入して仕様書、機構設計、製作、設置、試験、
メンテ、時には集金までやって(笑)多忙でした。jw_cadは名作と思います。

これで天文やってなかったら希望の技術屋にも限界が来たように思い、
★様様です。
(余談ですが郷里で望遠鏡を作ったら工場でスカウトされました!)
何でもコンピュータの恩恵を受けたのは天文屋と光学屋と言われていた
らしいですが、その割に仕事の範囲が広すぎて応用が利かなかった思い。

今は定年退職し時間が出来。。と言いたいのですが、私事に振り回される
昨今で、計画していた事が自由に出来ないのが悩みであります。(^0^8
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by Abbebe »

自作プラネタリーエクステンダーの続きです。
設計値データによる収差図を示します。
最大像高H=5.0mmとしています。(WZO ASI662MCの対角寸法/2≒3.2mm)
1. φ300mmf2850mm理想対物レンズ(収差を発生ゼロの理想的な対物レンズ)に
 拡大率2倍使用時の収差図です。
2. 私の自作φ300mmCRC(コレクテッドリッチークレチアン)望遠鏡
 (φ300mmf2850mm(設計値f2863mm))に拡大率2倍使用時の収差図です。
実は軸上色収差についてはφ300mmCRC望遠鏡使用状態で最適化された設計であることが解りますが、
プラネタリーエクステンダー本体の軸上色収差も極小であり、球面収差ゼロの対物レンズに使用した時に
球面収差ゼロとなることが明確ですね!
なお、球面収差、軸上色収差共に、エクステンダーはエクステンダー本体の収差に無関係に対物レンズの収差を
拡大率^2だけ悪化させ、更にエクステンダー本体の収差が加わった状態になります。
従って軸上色収差については今回のように相殺する方向に発生させることで改善することが可能で、
そう言う意味では接眼レンズ等の正のレンズによる拡大よりもエクステンダー、バローレンズ等の負のレンズによる
拡大の方が有利と言えますね。
PE2x-Idf2850abe.jpg
PE2x-CRC300f2850abe.jpg
(^0^)コメト
記事: 161
登録日時: 2023年6月23日(金) 14:28

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by (^0^)コメト »

Abbebeさん、曇天会議の皆さん
横槍のスレで済みませんでした。m(_ _)m

現在、実はAbbebeさんのカキコを拝見させて頂きまして、
大いに参考になっております。

ISSのような高速移動物体の撮影をやっているのですが、
これが意外と難物でして、拡大して撮影。。。と思っても
アイピースで拡大は本来ではなく、やはりバーローとか
エクステンダーが良い結果を生んでおり、理論通りの結果
と思います。負のレンズは収差取り。。事実です。

このように収差図で示して頂いたので、実感出来てありがたいです。
バーロー2本をテストしましたが、結果はまずまず良好です。
一本は中華製らしく、あまり良い結果ではありませんでした。
還暦α
記事: 71
登録日時: 2023年6月20日(火) 12:59

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by 還暦α »

皆様こんにちは。

今はレンズ設計用のフリーソフトがあるので設計する方はいると思いましたが
まさか製作までされる方がいるとは思ってもいませんでした。
恐れ入りました。

私は就職してからずっと光学関係の仕事をしており、結像レンズを特注するとイニシャルコストだけで
数百万円かかるという先入観があり、市販のレンズの組み合わせで何とか必要な性能を出してきました。
(レーザ集光光学系で軸上の狭い範囲だけですがガラスモールド非球面レンズの色収差を
補正するレンズを市販レンズの組み合わせで実現したことがあります。)

7年前に勤務先の別の部署で紫外寄りの波長と赤色で色消しにした2倍の顕微鏡対物レンズを10本特注した時は
総額で200万円近くかかったそうです。
倍率2倍という事は焦点距離にすると90~100mmです。
画角は広くなくそれほど難しいレンズにはなりそうにないものです。
紫外寄りの結像レンズという事で引き伸ばし機用の焦点距離100mmぐらいのレンズが使えるかもしれないと
思ったのですが既に生産しているところが無かったので黙っていました。

Abbebeさんの製作されたプラネタリーエクステンダーレンズのレンズ部分の製作費はどの程度かかった
のか差し支えなければオーダーだけでも良いので教えていただくことは可能でしょうか?

私はPC98全盛のころはオプト98というDOS版の光学設計ソフトを使っていました。
確か9,800円だったと思います。
別の部署ではワークステーションでCode Vを使っていたところがありましたが当時はレーザを
集光するだけなので球面収差が見られれば良くオプト98で十分でした。

その後、現在の勤務先に転職してから結像光学系も手掛けるようになりました。
20年程前、たまたま同僚に社会人学生として大学に通っているものがいて、学割で半額になる光学設計ソフトが
あるので試してみようという話になりOpTaliXというソフトのシェアウエア版OpTaliX-LTを試してみて
そこそこ使えたのでPro版を学割で購入しました。
当時の価格でOpTaliX-LTが6,850円、Pro版が237,300円のところ学割で118,650円で購入しました。
以来、OpTaliX-LTを使っています。
LT版には自動設計機能が無いのですが市販レンズの組み合わせで何とかする分には必要ないのと
LT版は無償更新によって最新版が使えるのですが、Pro版は途中から年間保守契約になりその時点で
更新せずに古いままでWindows10に対応していない状況になっているからです。
(その後、別の者が補助金を活用してZmaxを導入しましたが全く使いこなしていません。もったいない。)

OpTaliXはちょっと使いづらい面がありますが、幾何光学的解析なら一通りのことが出来ます。
取り扱っているエクレシアのホームページには2009年と少し古いのですが
"Handbook of Optical Systems (光学系ハンドブック)" 第4巻 に掲載されているレンズデータが
ダウンロードできるようになっているので参考になるかもしれません。
接眼レンズのナグラーやシュミットカセグレン、マクストフカセグレンなどのデータがあります。
Abbebeさんが別スレッドを立てておられるリッチークレチアンのデータもありました。

望遠鏡とは関係ありませんがLithographicフォルダーにある半導体製造装置のステッパーに使われている
レンズを見ると装置が高くなってしまう理由がわかります。

OpTaliX-LTは30日間お試しで使えるのでデータを見て必要なものはCode VやZmaxなどの形式で
保存しておけば他のソフトでも読み込めるのではないでしょうか。

OpTaliX-LTのダウンロードはこちらからできます。

http://www.ekklesia.co.jp/link/download/download.html

レンズデータはこちらに説明があります。(上記からもダウンロードできます)

http://www.ekklesia.co.jp/link/other/hos.html

皆様の参考になれば幸いです。
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by Abbebe »

プラネタリーエクステンダーの製作費ですが、玉2枚について最小費用で可能な最大個数製作と鏡筒部品2セット製作の合計費用でVSD90SSは買えない!という程度でしょうか。
私がこれまでに(退職後)自費で製作したレンズ玉はこの2枚も合わせて合計8枚になりますが鏡筒製作も含めてお蔭様でこれまでなんとか全てミス無く完成しています。まあ現役時代には失敗もやって来たのでその経験が生きているとは言えると思います。
ところで光学シミュレーションソフトですが、私も現役時代にOpTaliXを使ったことが有りますが確かに癖が強かった印象を持っています。今の時代はZemaxが間違い無く標準だと思います。本当の世界標準はCodeVですがちょっと高杉ですね。OPTASは基本的には消えてしまいましたがデモ版が生き残っていて私は使えています。
どのソフトでも必要な機能は持っているハズで有り、現役時代に実は異なるソフトで結果の比較等をやって結果は全て一致したという経験も有るので、結局慣れればソフトは何でも良いと思います。趣味でやるには。
なお実際に製作する為には公差解析とかゴーストシミュレーションとか本来の結像性能出し以外にやらないといけないことも多々有り、また失敗すると大損害!という不安やスリルも有るのですが、上手くいけば確実に面白い世界で有り、高い満足度を得ることが出来る趣味だと思ってやっています。
還暦α
記事: 71
登録日時: 2023年6月20日(火) 12:59

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by 還暦α »

Abbebeさん、皆さんこんにちは。

Abbebeさん、情報ありがとうございます。
やはりそれなりに費用が掛かりますね。
最大数量は研磨皿の大きさとレンズの径で決まるという事ですね。
何セットか作れれば1セットあたりにするとものすごく高いわけではなくなりますね。
私の職場で製造しているものは特注品や受注生産の物が多く、コスト的には吸収できそうな
感触を得ました。
後は製造誤差に対するトレランスを考慮しなければならないという事ですね。
とても参考になりました。

お使いになられたことがあるのでご存じと思いますが、OpTaliXはドイツ製で販売している会社が
作った日本語のマニュアルがだめでしたね。
全くの初心者は使いこなすことができないと思いました。

OPTASは使ったことが無いのですが日本の会社が作ったソフトでしょうか。
ネットで検索しても論文がいくつかヒットするだけで情報が出てきません。
会社名がオプト、ソフト名がOPTASでしょうか。

Zmax -> Zemaxでした。お恥ずかしい。
Abbebe
記事: 72
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 自作プラネタリーエクステンダーレンズ

投稿記事 by Abbebe »

この本、岸川利朗著「ユーザーエンジニアの為の光学入門」(1990年)の中に出て来るデータや収差図等はOPTASによって出力されたものが使用されています。
この本のまえがきに、OPTASは(株)オプトで開発販売され、開発者は社長山岸晟氏とあります。
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