ビクセン ポラリスR100L

「古スコ広場」 懐かしの望遠鏡、昔欲しかった望遠鏡、古い望遠鏡や産業を語りましょう
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さとう
記事: 115
登録日時: 2023年7月16日(日) 08:08
お住まい: 大阪市

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by さとう »

「M」 さんが書きました: 2024年3月24日(日) 23:40 底抜け さん さとう さん みなさん こんにちは

10cmF10反射望遠鏡で、「(超)精密球面鏡」付きと「波面誤差1/8λの放物面鏡」付きのどちらかを差し上げます と言われたら、どうしましょう?
球面鏡は既に持っておりますので、放物面鏡を頂きたく存じます。
Abbebe
記事: 86
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by Abbebe »

「M」さん、皆様、こんにちは、
Abbebeです。
φ100mmf1000mm(R=-2000mm)の場合の放物面と球面の最大鏡面形状誤差ですが、
日本式(木辺氏他の考え方)では、
 ≒λ/6、(波面誤差≒λ/3)。
ベストフィット式では、
 ≒λ/23(波面誤差≒λ/11)。
現在はベストフィット式の方が正しいというのが有力だと思います。

なお、数値が4倍になるのは球面の場合の話であって、放物面を狙った形状の場合の差はもっと小さい差になるので注意が必要です。誤解の無いようにお願いします。

ということで「M」さんの算出値はベストフィット式だと考えられ、
私は同意いたします。

それでは、許容値(合格ライン)はいくらなのかというと、
レイリーリミットは
鏡面形状誤差λ/8(波面誤差λ/4)で、
これが合格ラインとされており、

φ100mmf1000mmの場合、放物面に磨く必要は無い!球面で問題無い!
ということですね。

球面はレンズ研磨機で高精度に量産可能ですが、放物面は一品造りで職人技が必要ということで、バラつきも大きくなりそうですね。

現実問題、大口径小F値の大ミラーでは放物面形状を狙ってもこの合格ラインに入れるのが大変な訳です。

ということで仕様的に球面で合格となるミラーであればレンズ研磨機による球面を量産すべき(放物面を狙う必要は無い)と考えていますがいかがでしょうか?
富田
記事: 16
登録日時: 2023年6月12日(月) 18:16

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by 富田 »

Abbebeさん
Mさん
さとうさん

Abbebeさんのご意見に賛同致します。

ただし、個人的には望遠鏡は趣味のものですので、自分で使う(持つ)のならば、球面よりは少しでも理想放物面近くに磨かれている主鏡の方が良いと思っています。そのために私自身は小口径長焦点反射鏡の自作研磨に拘っています(大口径短焦点鏡を磨く技術は到底持てませんので)。

直径10cmF10反射鏡の場合、波面誤差1/4λ鏡面精度1/8λの放物面鏡といってもおそらくフーコーテストでは教科書的な放物面の様には全く見えないと思います。実際に市販品の多くはそのようなものばかりです。
下記のシベットさんのブログ内の私からのWS資料⑤に市販の10cmF10主鏡の代表として10面のフーコー像を示してあります。
http://uwakinabokura.livedoor.blog/arch ... 13240.html

それぞれの数値は鏡面の精度で、(渡部氏開発のRFTによる測定値として)全て波面誤差で示しています。お分かりのように精度が最も低いビクセンの鏡でも1/9λ、鏡面精度1/18λですが、私にはどれも放物面には見えません。一見(足立鏡などは)放物面様に見えても、大概は二重球面や双曲面といえるものです。
ベストフィット面からの誤差測定による値なら、偏球面であっても程度が軽ければ十分に波面誤差1/4λ鏡面精度1/8λ以内になります。
この程度の小口径長焦点反射鏡では、口径が大きくF値が小さい鏡面とは求められる精度、許容される誤差が全く異なります。

ということで、先のMさんのご質問にお答えすると、私なら間違いなく精密球面鏡の方を選択します。もちろんどれくらい精密な球面かによりますが、理想球面鏡なら絶対そちらです。完璧な精密球面の製作自体が、たとえ10cmF10であっても(フーコーテストだけでナンチャッテ)放物面もどきを磨くよりも、はるかに困難であり、また精密平面鏡の研磨にも利用できて有用だからです。

さとうさんのMさんへのご回答も心情的には理解できます。
しかし、他の方々が述べられているように、
①鏡面精度1/8λの10cmF10の放物面鏡は、実際には理想球面鏡(理想放物面からの誤差が1/11λの鏡面)よりも鏡面精度としては劣ること
先の私の資料に示した10個の市販鏡よりもかなり悪い精度で、実際には悪評高いあの4インチ半F8にも劣る鏡面精度です。
②また精密球面と許容できる鏡は、普通の市販望遠鏡レベルでは入手不可能であること(球面鏡として客観的に精度保証された高価な鏡や著名人作の特注品をお持ちでしたら大変失礼、ご無礼お許しください)
などから、その放物面鏡を選ばれることは個人的にはお薦めしません。

とは言うものの、それらは精度的には1/8λと1/11λと同じ様なものですので、見え方に大差は無く、円滑に磨かれていればどちらもよく見えると思います。
やはり「信じるものは云々」と同じで、あくまでも心情的なものの方が大切なのかもしれませんね。

くどくどと申し訳ありませんでした。
最後に編集したユーザー 富田 [ 2024年4月26日(金) 17:01 ], 累計 12 回
還暦α
記事: 116
登録日時: 2023年6月20日(火) 12:59

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by 還暦α »

皆様こんにちは。

F値が大きい場合は精密な球面鏡の方が良いとのご意見に私も賛同します。

ビクセンのR200SSが発売された時に球面鏡にアルミ蒸着する際の膜厚を制御することで
放物面にしているという事を強調していました。
R200SSを所有しているので蒸着膜の膜厚制御で放物面に出来るのなら球面と放物面の面高さに
どの程度差があるのだろうという事で計算してみました。
自分で計算式を考えても良かったのですが間違いをしそうなのでこちらの式を参考に計算しました。
(全体的にはちょっと怪しいサイトでしたがこの部分はまともそう)

http://sgwd.jpn.org/Astronomy/BaseData/ ... urfase.htm

http://sgwd.jpn.org/Astronomy/BaseData/ ... rabola.htm

R200SSでは、外周を一致させた場合、中心の高さは球面の方が放物面より約3um低いという結果になりました。
蒸着で3umもの膜厚にするのはかなり大変で、面も荒れてくるのではないかという事が懸念されます。
(通常のアルミミラーの膜厚は0.1um=100nm=1000Å程度です)
なにか工夫をしているのでしょうか。

D100 f1000mm(F10)の場合は0.1um程度になりました。
放物面に修正する量は最大で0.1umという事になります。
実際には面全体を磨いていくのでもっと研磨しているのでしょうけれど0.1umよりも小さい量を制御して
行くというのはとても大変なことだと思います。
そういう意味で精密な球面で波面誤差が小さいのであれば無理に放物面にする必要はないと思います。

0.1umであれば蒸着の膜厚とほぼ同じなので膜厚制御で何とかなりそうです。
ビクセンがR200SSで採用していてD100mmに採用していないのは口径が小さすぎてうまく行かないからでしょうか。

参考にD100mm f200mmの放物面と球面の外周を一致させた場合の形状グラフをアップロードします。

計算間違いがあったらご指摘ください。
面高さの差D200f800.jpg
面高さの差D100f1000.jpg
面高さD100f200.jpg
富田
記事: 16
登録日時: 2023年6月12日(月) 18:16

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by 富田 »

還暦αさん

僅か直径10cm程のガラス表面にアルミ蒸着の膜厚を調整して、その表面形状を球面から放物面にすることが技術的に可能だとしても、おそらくコスト的には採算が取れず、またその意義も少ないからと考えます。
Abbebeさんのコメントの通り、10cmF10では球面であってもレイリーリミットをクリアしますので、放物面化する必要性がありません。
また現実問題として曲率の強い20cmF4鏡と異なり、曲率が弱い小口径長焦点鏡を機械研磨のみで精密な球面に研磨すること自体が困難だと思われます。主鏡は精密球面と謳っていた高橋製作所の新旧10cmF10反射鏡筒も10本近くRFT測定しましたが、球面と明確に言えるものは一つもなく、球面に近い?ものしかありませんでした。
ましてや、仮に計算通りの厚さにアルミを蒸着する技術があったとしても、元の表面形状が球面から外れたような量産機械研磨品では蒸着しても放物面からは程遠い鏡、予想も付かない形状になると思います。
最後に編集したユーザー 富田 [ 2024年4月26日(金) 06:39 ], 累計 5 回
Abbebe
記事: 86
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by Abbebe »

還暦αさん、富田さん、皆様
Abbebeです。

還暦αさんの最後のグラフから球面よりも放物面の方が中心深さが浅いことが解り、
メッキ厚としては周辺よりも中心を厚くなるように制御しているという結論になりそうですが、実は実際は少々ギミックを加えて周辺よりも中心の膜厚が薄くなるように制御しているようです。

ギミックの内容は放物面形状算出の為の近軸R値を微小シフトすることであり、ベストフィットRと同様の考え方ですが、ベストフィットRから更に2倍程シフトします。
このようにすることで、球面よりも放物面の方が中心深さが深い状態となり、膜厚制御は中心が薄くなるように行います。
この状態は、球面から中心を掘ることによって放物面に修正するというイメージとも合致します。

グラフはφ200mmf800mm放物面の球面からの形状差量で、左側1.が鏡周、11が中心、上方向が膜厚増加方向です。
 一番上のグラフはギミック無し放物面、
 中央のグラフはベストフィットR状態の放物面で、球面鏡の場合の形状誤差は1.4λであることが解ります。
 一番下が今回の膜厚制御目標放物面で、最大の膜厚差は≒5λ(≒2.8μm)程度です。
R200SSメッキ-2.jpg
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ガラクマ
記事: 527
登録日時: 2023年6月07日(水) 21:16

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by ガラクマ »

 富田さんのご紹介、シベットさんのページ、量産型の10㎝F10の比較、ちょっと驚きました。思った以上に精度よさそうですね。
それなのに114㎜は「114㎜に良鏡なし」といわれてきました。実際、サイトの資料でも相当差が差があります。
球面はレンズ研磨機で高精度に量産可能ですが、放物面は一品造りで職人技が必要ということで、バラつきも大きくなりそうですね。
 以前からここが疑問なんです。
「レンズ研磨機で磨いたら高精度に磨ける」ということではなく、計算通りに磨くことが難しいことが問題ではないでしょうか。
 同じスペックのアクロマートレンズでも明らかに差がありますし、反射させるとよりアラがより浮き出てきます。

 114㎜Fl900㎜も球面狙いと思いますが、10㎝F10とあんなに差があるのは、具体的にはどのように違うのでしょう? 不思議です。工場(メーカー)の差でしょうか。
 プライベートメッセージです
Abbebe
記事: 86
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by Abbebe »

私の思い込みも有るかもしれませんが、
研磨機は、回転運動と往復運動の2つの運動を与えた2つの面がどの部分も同様に接触していれば双方共球面であるという理屈の元に正しいRの球面研磨皿で研磨機研磨を行うと正しいRの球面レンズが出来るというのが基本原理として存在していてこれで球面レンズが出来上がります。

この方法で造られたレンズは写真レンズとしては通用する精度が保証されていて世の中に溢れていると思います。
まあ写真レンズとしては保証出来る精度であって反射鏡として高精度というのはちょっと間違っていたかもしれませんが。

反射鏡研磨においても同様にまず自然に球面が出来ていることが次のステップの為の条件だと思います。
研磨技術者は、その球面状態から横ずらし(オーバーハング)とか小ツール研磨とかを駆使して非球面化を行う訳で、これには経験と技が必要であって技術の差は出てしまうと思います。
ここが、球面と非球面(放物面等)の大きい違いだと思います。
「原」
記事: 349
登録日時: 2023年6月14日(水) 19:16

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by 「原」 »

研磨装置の大きさや研磨方法にも依ると思います。平面の場合、巨大な平面ピッチ盤上で遊星回転するミラー基板が3枚以上動いて、鏡面の端と中央部で研磨圧やピッチ面との接触時間に差が無いように磨いて、エッジのダレもなく1/8λくらいはスパッとできるそうです。球面も同様で規定のカーブを出した大きめのピッチ板に対して集合研磨でピッチ面からはみ出さないように、すべての面が等時間等圧で研磨すれば理論上は精密球面が得られるはずです。(半導体シリコンウエハーの研磨ではpH、温度、研磨圧、研磨速度を厳密管理して、1mm以下の厚みのΦ20~30cmの極薄素材を精密平面研磨できています)

それから、リングや研磨痕のような局所的な変位は反射角度θの変化が大きく、可干渉条件以前に集光位置が変わってしまいます。これは波動光学の前提条件から相当外れているので注意が必要です。(大抵の波面収差の説明図面は、光路長差が階段状に差がある絵で説明していますが、連続面である以上、角度が変わっていることを踏まえなければなりません。)
還暦α
記事: 116
登録日時: 2023年6月20日(火) 12:59

Re: ビクセン ポラリスR100L

投稿記事 by 還暦α »

皆様こんにちは。

富田様
確かに理想的な球面が出来ていなければそこに手を加えたところで意味はないですね。

Abbebe様
昨日の計算は近軸焦点距離が同じ球面と放物面の比較です。

昨日、紹介させていただいたサイトに光軸からの距離Dの位置での焦点距離の式がありましたので
再外周で放物面と同じ焦点距離になる球面で計算してみました。
(式を解くのは面倒なのでexcelに計算式を入れてrを変えて焦点距離が同じになるところを探しました)

D100mmf200mmでは曲率206.3mmの球面になり、最外周基準では中心部が放物面よりも高い球面になりました。
球面から中心を彫り込んで放物面に研磨する話と合致しますのでこちらが正解ですね。

D200mmf800mmでは曲率1603.1mmとなりました。
近軸同焦点では1600mmですので3.1mmの差です。
F10であれば意識しなくてよいレベルと思われます。

原様の平面研磨のお話は自動両面研磨機による研磨ですね。
勤務先でガラス平面基板の研磨で一時期使っていました。
ピッチ盤ではなく平面の鉄皿に10mm程度の間隔のメッシュ状の溝のある研磨パッドを貼ったものを使っていました。
研磨する基材は外側に歯車のついたホルダーにセットし、研磨機の外側と内側にある歯に嚙合わせることで
遊星回転させるようになっていました。(確か外側の歯は固定で内側の歯が回転していたと思います)
研磨パッドで機材を上下から挟み込んで、上側に載せる錘で圧力を調整して両面を研磨する機械でした。
酸化セリウムを水に溶いた研磨剤を循環させて磨いていました。
条件出しが大変なようですが一度決まってしまえば再現性よく研磨できているようでした。
職人さんが辞めてしまい後継者がいなかったので研磨機は処分されてしまいましたので今はありません。
(社内で研磨するよりも外注したほうが性能が良いというのも理由の一つでした)

シリコンウエハの場合、SiO2やZrO2の入ったアルカリ性の研磨液で磨くそうです。

球面の場合はピッチ盤必須ですね。
球面研磨はピッチ盤の曲率維持が大変なので平面研磨より難しいと思います。

リングや研磨痕の話は原様の言われている通りですね。
急激な変化は傾きが大きい訳で特に反射ミラーの場合は影響が大きいですね。
職人さんは「光学研磨は面精度だけでなく面粗度(=表面粗さ)が重要」とおっしゃっていました。
面高さD100f200-2.jpg
面高さの差_外周合わせD200f800.jpg
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