しょげるhは,暫くお休みしてもらって,生まれて初めて対物レンズを研磨する私はニコニコでした.共擦りのT1は裏も磨かれてますから,研磨砂が広がったり偏ったりのパターンを眺めながらの単調ではありますが,神経を研ぎ澄まさないとならない仕事は楽しいです.
さて,再研磨中に,この25cmアクロをどうやって設計したのかを簡単に説明しましょう.原型は「望遠鏡光学・屈折編」(吉田正太郎著)の173頁から書いてあるフランホーフェル型対物レンズです.目標にするFを決めてから,単に比例でサイズと焦点距離を変えて形にします.性能重視のF15にすれば,球面収差もコマ収差も測定限界以下になるところですが,さすがに長大なので,汎用を狙ってF12にしてました.r2=r3にして,それぞれのレンズの間隔を調整して収差補正をするアイディアは,P172のFig. 5.7のリトロー型のレンズ(ヤーキースの)から思いつきました.
リトロー型には思い入れがあって,大体,昔の4cm fl800mmのアクロマートレンズはリトロー型でした.原型のF19に対してF20は長くなっているだけコマが減り,F15のフランホーファー型と性能差は極少ない.むしろ写真に使うg線に関しては優秀です.
ヤーキース天文台を作るとき,誰かががやったらとリトロー型を推薦したようですが,長いのが最大の欠点で,そこをどう説得したのか興味が湧きますね.
子供の頃使っていた4cmのアクロマートは,中学の理科室から廃棄処分した天体望遠鏡のでした.それ以前に,小遣いを貯めて買った600円の青板1枚ガラスのメニスカス対物レンズのキットで作った望遠鏡より,格段に良く見えたのを今でも思い出します.出来た望遠鏡のテストは,500mほど離れた酒屋さんの夜の看板でした.「清酒○○」と書いた看板で見えっぷりを確かめていました.
リトロー型はガラス材質を決めてしまうと,補正できるのは色収差だけで,球面収差やコマ収差は出たとこ勝負で変えられません.だけど,大抵は実用になる程度の収差に抑えられた設計になってしまうところが不思議です.