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安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月26日(土) 23:16
by ガラクマ
 手持ちの安物貼り合わせレンズをチェックしておりました。
ちょうどテーブルの上にLEDの灯りがあるので、それを反射させて見分けようとしているのですが、案外単純ではないし、いろいろあって面白い。
 たぶん中国製の双眼鏡用と思われる単品レンズ。レンズの状態で買いましたので、何用か分かりません。
左から①D=80、Fl=300 ➁D=51、Fl=200 ➂D=40、Fl=123 です。

全部、前(クラウン)側からの写真です。
みなさん、解説できますか?

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月27日(日) 11:10
by ガラクマ
 私の考えですと
前面からの光は、第1面で反射光と透過光に分かれます。
2面/3面は貼り合わせですので、薄く鈍く白っぽい(色が分かりにくい)見えにくい反射で、無視します。
4面の反射は、第1面の透過光の中から反射する光が、また第一面を透過して目に入ってきます。

 ただ、コーティングは空気面とガラス面の屈折率の差で発生する反射光を、透過光との光の干渉で打ち消し透過すためのものです。
 単層コートですと、第1面と第4面を同じコーティングを施しても、第一面を前方から見た波で言うと固定端反射(空気⇒ガラス)で1/4波長で打ち消され透過しますが、第4面では自由端反射(ガラス⇒空気)なので、1/4波長では反射してしまいます。
 第4面の反射光は第1面の裏側で、また反射されてしまいます。
目に入るものは(第1面の反射光)と、((第1面の透過光)ー(第4面の透過光)ー(第1面の裏面反射光))で第1面と第4面の2つの反射光の色が違っても不思議ではありません。

 マルチコートでしたら、多数の波長に対応したものですので、入りと出が別としても守備範囲のどっかの膜でスルーできます。
ですので、マルチコート守備範囲外の波長で目につきやすい色の反射が見えて、第1面と第4面の2つの反射光の色が同じという場合もあります。高級なレンズでは深い紫の反射光が見えるのも納得いきます。

 ただ、ここで疑問なのが第1面(と思われる)のほうの反射が、白色なのです。単層コートでも少し色がついて見えるのですが、無コート+第4面コートなのでしょうか?片方するのなら、第1面のほうと思うのですが、いかがでしょう?
白が明るすぎて、両面単層コートでもそう見えるのでしょうか?

あと、また悩ますような画像を添付します。左右の反射光の色が違う中国製の双眼鏡。傾けても変わりません。
比較は、コーワの双眼鏡。こちらは防水用光学ウィンドーがついてて、そちらの反射もありますが(ウィンドーの反射が白っぽく見えますが肉眼では)全部同系色です。

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月27日(日) 12:11
by ガラクマ
 お騒がせしました。上を書き込んですぐ気がつきました。
ただ、あさはかな考えでも、お恥ずかしながら参考になるかもと、削除せず残しておきます。

 結論からして、両面単層コートのようです。裏かえして比較することを忘れておりました。
裏かえしても、見る方向から第一面の反射は白色に見えて、第4面からの反射は青緑です。ということはコーティングの面からしてどちらから見ても対称です。色がついていることから無コートでは無いようです。
最近、コーティングでブルーフィルム、グリーンフィルムと中国サイトにはありますが、ブルーフィルム(単層コート)ですね。一番初めの書き込みの写真の真ん中がグリーンフィルム(3層以上のマルチコート)でしょうね。

 お騒がせいたしました。
ただ、この発見?は、白と対になった第4面の反射光の色の違いとか、ちょっと面白いので気がついたら追記します。
”キズあり”のレンズですが、確かにキズが目立ちます。

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月28日(月) 01:52
by Abbebe
少しでも緑を感じる反射光は単層では不可能(赤側も青側も真中の緑よりも低下していないと緑は感じられない!)
と思われるのでマルチだと思います。
③のみが単層だと思います。(色的にも光量的にも)
いかがでしょうか?

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月28日(月) 18:42
by 還暦α
ガラクマ様

反射光の色と明るさから私もAbbebe様と同意見で、

①片面マルチコート、片面コートなし
②両面マルチコート
③片面単層コート、片面コートなし

のように思います。

片面コートの場合、拭き取り等によるコーティングの剥がれを考慮するなら内側になる4面をコートする方が
安全と考えられます。
第1面が無コートは理にかなっていそうです。

以前、某社の記念品でもらった双眼鏡は接眼レンズの外側の面に濃い紫色の高級なマルチコートがされていました。
しかし、蒸着時に基板加熱していないソフトコートだったようで、軽く汚れを拭いたらコーティングが剥がれて
しまいました。
タダでもらった物なので製造時に問題のあったB級品以下だったのかもしれません。

ガラクマ様の
「単層コートですと、第1面と第4面を同じコーティングを施しても、第一面を前方から見た波で言うと固定端反射(空気⇒ガラス)で1/4波長で打ち消され透過しますが、第4面では自由端反射(ガラス⇒空気)なので、1/4波長では反射してしまいます。」
は少し違うと思います。

垂直入射の場合、屈折率n1とn2の境界面での強度反射率Rは R=((n1-n2)/(n1+n2))^2 です。(^2は2乗)
逆方向に光が入射する場合でも2乗になっているので同じ反射率になります。
単層コートの反射防止膜ではMgF2(フッ化マグネシウム)が使われる場合が多いです。
空気とMgF2の反射光とMgF2とガラスの反射光が逆相になり打ち消されるように(光路長が往復でλ/2になるように)
MgF2の膜厚を調整します。(λ/4の光路長になる厚みにする)
それぞれの境界の反射率は逆方向でも同じになるので逆方向入射でも打ち消される量は同じになります。
という事で 空気⇒MgF2⇒ガラス と ガラス⇒MgF2⇒空気 の反射率は同じになるはずです。

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月28日(月) 23:47
by ガラクマ
お二人ともツッコミ入れていただき、ありがとうございます。
自信がなかったので、細かく私の考えを書いたところもあります。

3‐4層のマルチコートが反射面が緑色に見えるものが多いと、以前リンクしたサイトで勉強しました。
そして中国製レンズのサイトを見ていて、以下のようなサイトで
 https://ja.aliexpress.com/item/1005005534789251.html
 https://ja.aliexpress.com/item/1005008714838729.html
グリーンフィルム(マルチコート?)よりブルーフィルムのほうが安いと知り、中国製レンズのブルーフィルムはシングルコートなのかと思った次第です。
表裏返しても、その面から見て一番手前の反射が明るく白く見えますので、対称と思った次第です。

確かに、表面も裏面も、MgF2膜で往復で光路長がλ/2になるように作る(膜厚λ/4)のが、コーティングとは心得ておりますが、屈折率が高いガラスに入射する場合と、低い空気のほうに出射する場合で反射率自体に差が出そうですし、その透過光ではなく反射光をみているので、なかなかイメージが湧きません(電気もインピーダンスが高い方に流れる時(壁に当たる時)反射しますし・・)

 皆さんの意見を参考に、もうちょっと考えてみます。

 

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月29日(火) 02:03
by Abbebe
ガラクマさん、還暦αさんが、計算式も使って入射方向が逆の場合も反射率が同じであること~効果が同じであることを説明されておられるのですが、それに対するガラクマさんからの返信内容にはまたいきなり反射率自体に差が出そう!というように否定されておられます。
これでは還暦αさんが気を悪くしても仕方がない状況だと私は感じます。

既に応用が確立されている技術論である訳ですから真実は一つであって(真実以外は間違いです!)、頭で考えてどうのこうのとかイメージがどうのこうのの話では無いと思います。

ここでは文章のみでのコミュニケーションなので技術内容等については読解が難しいという問題が有るのかもしれないということも感じています。
是非私とのFace to face議論を希望いたします。

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月29日(火) 02:56
by Abbebe
ちょっと細かいところで私はガラクマさんの内容(反射率自体の差)を誤解していたかもしれないですね。

空気→コートとコート→硝子の反射率は異なる場合が多いです。が、
これが残存反射率発生の原因になるのですが、

コートの屈折率=硝子の屈折率^0.5(例えばコートnd=1.38、硝子nd=1.90)の条件(最良条件)では
空気→コートの反射率=コート→硝子の反射率 となって、
λ/2の位相差で打ち消されると光量ゼロとなります。

従って最良条件で膜厚(空気換算)λ/4の場合、波長λについては反射光が消えます。
最良条件でなくてもコートの効果は十分有るので普通に実施します

空気→コートの反射率とコート→空気の反射率は同じ!
コート→硝子の反射率と硝子→コートの反射率は同じなので、
入射方向が反対であっても反射率は変わらない!

となります。
いかがでしょうか?

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年7月29日(火) 12:14
by 「原」
反射率の対称性はAbbebeさんと還暦αさんのおっしゃる通りです。光学は「ほとんど厳密数学」ですので疑念の余地はありません。
でも、一方で眩暈を覚えるような「現実」があります・・・染料をコーティング「もどき」に使っているケースがあるんです。。。。をよよ。。。

私が以前分解した事がある中華製のレッドアイ双眼鏡は、対物レンズ側から見ると赤っぽい反射がなんとなく見えるのですが、透過でも赤っぽい??
変です。透過色と反射色は補色の関係にならなければならないはずなのに。分解してレンズを観察してみると、裏面側に「赤い染料」のコートがされていました。これなら透過で赤っぽく見えます。

外面側から見るとガラスを通って染料を通って、空気界面に到達した光の一部は反射されて、染料をもう一度通ってから見えるので赤っぽい。(滝汗)吸収損失でちょっと暗くなっているので反射防止っぽく見えるけど、透過率そのものが減っている。

レンズを外して裏面側から反射を見ると、染料と空気界面の表面反射なのでニュートラルで白っぽい反射が見えるという「非対称性」を実現。恐るべし!日本の御三家も真っ青の光学系でした。こんな知恵があるならもっと良い方向に使って欲しいのだが。。。

染料を使うケースは貼り合わせ接着剤に混ぜたものなど多種多様で粗悪望遠鏡/双眼鏡に普及しているようです。ああ、なんてこった。

レンズを白い紙の上に置いて薄緑の着色が感じるようなら両面染料かも?んんん頭痛が。。。

Re: 安物貼り合わせレンズのコーティング

Posted: 2025年8月22日(金) 12:52
by Abbebe
染料による反射光色目の非対称性なるほどですね。
相当ぶ厚いコートだと思われるので球面精度に影響が出そうにも思えますがどうでしょうかね。

さてコートの色目等について少々、
単層コートの反射光分光分布はV型なのでそのVポイントの波長設定によって、
 1.ブルー系、
 2.マゼンタ(赤紫)系、
 3.アンバー(琥珀色(茶色っぽい黄色))
等の3色が可能で、これらは普通に採用されていて、
マゼンタ(赤紫)系が単層のスタンダードだと思います。
ブルー系は画像中に発生してしまっているゴーストを目立たないようにする目的で使われていることが多いように思えます。
アンバー(琥珀色)は望遠鏡等では殆ど見られないですが、写真レンズ等ではカラーバランス調整目的で、ゴーストの原因にならないような面を見つけて例えばその2~3面のみに施されたりしていて、緑~赤の波長範囲の反射を上げて透過率を下げることによって見掛け上の青部分の光量を上げる働きがあります。

これらの3色の反射光が1本のレンズ中(外から眺めたレンズ面反射光)に見られる全面単層コートのオールドレンズがカラフルでカッコイイというオールドレンズマニアも良く見掛けます。
(勿論以下のマルチの緑を加えた4色反射光のレンズもカッコイイと言われます)

これらの単層による3種類の色目(Vポイント位置波長設定)は、単層コートの膜厚のみのコントロールで可能になります。(実は管理が悪くて単に膜厚が厚くなり過ぎたことでブルー系が濃くなってしまっている傾向の物も有るように感じるのですが)

一方緑色は、単層コートでは不可能で2層以上が必ず必要で(V型特性→W型特性が可能になるので緑色が可能)、国産でのその走りはミノルタの2層アクロマチックコーティングレンズ(緑のロッコール)ですね。
基本、層数を増やせば様々な仕様が可能になり、現在ではコート仕様がマルチコート仕様としてブランド化されて、T*:ツァイス、SMC:ペンタックス、EBC:フジノン等、メーカーによって訴求されていますね。
望遠鏡介ではサクラ・コーティング(ピンク系?):賞月観星が有りますね。

http://blog.livedoor.jp/forrest1437/arc ... 30343.html

単層コート、マルチコートに関わらず反射光の色目がバラつくのは結局ロット毎の各コート層の厚みのバラつきだと思います。
同一ロット内であればバラつきは小さくなるハズですね。
設定スペック(許容量)的にOKであっても見た目の色目差は大きくなってしまうのがコーティングの世界のように思います。