「非球面モールドレンズに挑む!」日刊工業新聞社

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Abbebe
記事: 66
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

「非球面モールドレンズに挑む!」日刊工業新聞社

投稿記事 by Abbebe »

本の紹介です。
「非球面モールドレンズに挑む! 
 歴史を変えたパナソニックの技術者たち」日刊工業新聞社
ステマでは無いですよ!
1990年頃、画期的な方法の硝子モールドでの量産化がスタートし、
まずビデオカメラレンズから搭載され始め、その後カメラレンズにも搭載されるようになって
爆発的な発展を遂げ、カメラレンズの高性能化と低コスト化に大きく貢献していて、
現在では当たり前になってしまっている
「硝子モールド非球面レンズ」ですが、
その開発秘話とも言える内容です。
本当に歴史を変えた技術だと思いますよ!
私が参考になったのは、製品、生産設備に加えて後に世界標準となる測定機器までを自社で
開発したということですね。
残念なことに、
市場の小さい天体機材においてはイニシャルコストの問題なのか活用は進んでいないですね。
また、まだ反射面への応用は出来ていない(精度が不足?)ようです。
しかしこの一連技術においては金型を加工するのも直接レンズを加工するのも同じ工作機械を
利用可能ということであり、この一連技術の先に晴明望遠鏡に用いられた研削非球面加工技術が
あるということは事実のように思います。

それから実は、
最も残念なことは、この本の中身なのですが、
前書きに当たる 1-1 の内容が実は殆ど間違っている!ということですね。
明らかに勉強不足で書いていますね。
天体望遠鏡マニアが読むとここでこの本の信頼性がゼロになってしまって
後の内容も信用出来ない!となるかもしれないですが、
まあそんなことは無くて、
1-2 以降のこの本の本来の内容は大変参考になりますから
是非御一読をお薦めいたします。
読まれた方いらっしゃいますか?
P1040715(2).JPG
Abbebe
記事: 66
登録日時: 2023年6月14日(水) 11:03
お住まい: 愛媛県新居浜市

Re: 「非球面モールドレンズに挑む!」日刊工業新聞社

投稿記事 by Abbebe »

続きです。
この本の最終ページ、参考文献を見ると最初に出て来るのはやはり
吉田正太郎先生の本ですね。
非球面レンズのルーツが吉田正太郎先生にあることは間違い無いと思います。
また、
吉田先生は1978年に出版された「天体望遠鏡光学」以降、私のような機材マニアの
天文アマチュアに大きい影響を与え続けて来られたのですが、2005年92歳の時の
最新著書を最後に2015年102歳で無くなられました。
素晴らしい功績を残された反面、その後の天文アマチュアへの天体望遠鏡光学の
最新技術情報アップデートは完全に止まった状態になっており、
一方天体用の機材製品については近年、台湾~中国製等の光学技術の進歩~台頭が
目覚ましく、機材は日本製!という時代は終わってしまっているように感じられ、
現在の台湾~中国でどのような技術革新が行われているのかの情報が見えない状況
になってしまっているように思います。
以下、天文ガイド別冊 INTERACTIVE ASTRONOMY Vol.4 1995年 に掲載された
吉田先生のインタビュー記事抜粋です。
P1040716(3).JPG
P1040718(2).JPG
還暦α
記事: 51
登録日時: 2023年6月20日(火) 12:59

Re: 「非球面モールドレンズに挑む!」日刊工業新聞社

投稿記事 by 還暦α »

皆様こんばんは。

Abbebe様がご紹介されている本は読んだことがないのですが、ガラスモールド非球面レンズの話なので
またしゃしゃり出てしまいました。

世界初のガラスモールド非球面レンズを実用化したのは1985年、キヤノンの一眼レフカメラ用レンズだったようです。

https://global.canon/ja/c-museum/specia ... tion1.html

どのような非球面レンズだったのか詳細は不明です。

私が最初に就職したのはHOYAでして、私のいた部署と同じ敷地で光学ガラスを生産していました。
入社時には既にガラスモールド非球面レンズの開発が進んでおり、1987年に量産を開始しました。
半導体レーザのコリメート用(0.25mm窓ガラス前提)及びCDのピックアップ用(1.2mmポリカーボネート前提)の
非球面レンズが生産されていました。
当時、プラスチックのモールド非球面レンズが存在していましたが温度と湿度の影響が大きいことが
問題になっていたので急速に普及しました。
その後、DVD向けや光通信用のレンズに広がって行きました。
家庭の玄関ドアに取り付けるドアホン用のレンズの一部なども作っていました。

パナソニックはさらに後発だったと思います。(外販していなかっただけかもしれません)
当初、ガラスは住田光学ガラスが供給していて住田光学ガラスでもパナソニックが生産した同じレンズを
販売していました。(ピックアップ用)

30年以上前の話なので問題ないと思うので当時見聞きした話を紹介します。
(私が所属していた部署と同じ建屋で生産していました。)

モールドには金型ではなくセラミックスの型を使っていました。
この型が壊れやすく苦労していたそうです。

安全衛生委員会の巡視で型を加工している研削盤を見ることが出来ました。
当時生産していたレンズは最大でも直径10mmほどでしたが研削盤は幅2m高さ2m奥行き1.5mほどの
巨大なものでした。
サブミクロン以下の精度のある加工装置が他になかったそうです。
加工途中の型が固定されていて、色合いからすると窒化ケイ素系のセラミックスだったようです。
型の表面にコーティングしているという話も聞きました。

コリメート用のレンズは曲率が小さく、モールドするのが容易ではなく、専用のガラスを開発して
使っていました。
光学ガラスを生産していたからこそ曲率の小さいガラスモールド非球面レンズを開発できたのだと思います。

当時、私は社内生産していて入手しやすいこともあり、レーザー光の集光などに使っていましたが、
広がったビームを見ると明らかに研削痕によると思われる同心円状のパターンが見えました。

Abbebe様ご指摘のように現在でも望遠鏡などの反射光学系に使われない理由は研削痕の問題と
大きな物が作れないからだと思います。
屈折と反射では必要な精度が約2倍違いますね。
屈折で研削痕がわかるような状況では反射ではとても使えないことになります。
研削痕は最近のガラスモールド非球面レンズではかなり目立たなくなってきてはいます。
大きな物が作れない理由はコストの問題か、冷却の問題か、膨張率の問題あたりかもしれません。

その後、カメラ向けの大口径レンズとして球面のガラスレンズの上にプラスチックの非球面をモールドするという
ハイブリッドの非球面レンズが考案されました。
確かコニカミノルタが開発したように記憶しています。(違ったかな?)

望遠鏡に使えるような非球面を製造する新しい技術があると格段に性能向上できそうですが
大きさがネックでしょうね。

私も学生時代に吉田正太郎先生の「天文アマチュアのための望遠鏡光学」でたくさん学ばせていただきました。
素人でも読みやすく収差論をわかりやすく解説されているところがすごいと思います。
(同じころ買った松居吉哉著「レンズ設計法」は、数式だらけで、はじめは”ちんぷんかんぷん”でした)
「天文アマチュアのための望遠鏡光学」で学んだことは今の仕事でも役立っています。
非球面レンズに関しては製作困難ではないかと思われるようなものも掲載されていましたね。

旧掲示板に参加させていただくまで吉田正太郎先生の経歴を存じ上げておりませんでした。
実は2002年頃から東北大学に出入りしていたのでお付き合いのあった先生方にお願いして紹介していただける
可能性があったと思うと残念でなりません。
(つてを辿れたか、辿れたとしても会っていただけたかどうかはわかりませんが…。)

いつも長々と書いてしまいすみません。
「非球面モールドレンズに挑む! 歴史を変えたパナソニックの技術者たち」探して読んでみます。
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