近年性能向上が目覚ましい小型屈折鏡筒に搭載されていると思われる特殊低分散硝子材について、硝子材製品名とガラスコードを各硝子メーカーカタログから抽出。
アッベ数(νd)ランク毎に一覧表にしてみました。
硝子メーカーはOHARA、HOYA、SUMITA、光ガラス(Nikon傘下)の国内メーカー4社とSCHOTT(独)、CDGM(中国)の計6社です。
蛍石(人工結晶)は3社が生産していますが硝子ではなくて結晶であって単一特性なので一括りにしています。
ガラスコードは、基本特性であるnd(d線屈折率)の小数点以下3桁とνd(アッベ数)小数点以下1桁までの3桁を並べて6桁数値としたものであり、メーカー、製品名が違ってもガラスコードが同一数値であれば少なくとも基本特性においては同等特性と言えます。
アッベ数:νd=(nd-1)/(nF-nC)は、値が大きい程色分散が小さく色収差補正に有利であることを示します。
(式から解かるように実はアッベ数にはg線に関する情報は含まれていないのでg線について補正等の操作する為にはまた別の特性データを使用する必要があります)
アッベ数81ランクをEDガラス、95ランクをSDガラスと呼ぶのが通常傾向であことは間違い無いと思いますが(蛍石(フローライト)も95です)、望遠鏡メーカー、カメラレンズメーカー等、機材メーカーは自由勝手にED、SD或いはそれ以外の名称を付けていたりすることも有り、実際のところ使用されている硝子材のアッベ数ランクを特定するのは難い状況にあると言えます。
但し、使用硝子材を公表している機材メーカーも有り、その場合は今回のこの一覧表でアッベ数(νd)ランクが明確になります。
いずれにしても、近年これらのアッベ数の値が大きくなる方向の特殊低分散硝子材が開発されて使用されるようになったことが小型屈折望遠鏡光学系等の性能を飛躍的に向上させた要因であることは間違い無いと思います。
吉田正太郎氏の本には蛍石(フローライト)よりももっと色分散の小さい結晶として、フッ化リチウム(νd=97.3、ガラスコード:392973)が挙げられていますが、今回の一覧表で解るように現在既にフッ化リチウムを超える硝子は開発済で販売されている訳です。
また、近年小型屈折望遠鏡機材の主流が中国製品に置き変わっていっても硝子材だけは日本製が安泰と思っていたのも今となってはもう過去の話になって来ているようで、急速に中国CDGM製等に置き変わりつつあるようです。
超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
Abbebe様、皆様こんにちは。
原子吸光分光法などを使えば組成分析ができるので現物を手に入れられれば同じガラスを作ることが出来てしまいます。
実際には均質に製造するための条件が色々あると思いますので組成がわかっただけでは作れませんが目標の特性値だけから
始めるよりははるかに速いはずです。
(以前勤めていた会社の隣の建屋で光学ガラスの熔解をしており、酸素雰囲気で融かすとか金や白金の坩堝を使うとか
硝種によって色々な製造条件があると聞きました。)
マネされないようにするには組成を明示して特許で押さえるしかないわけです。
(組成分析ができるので特許侵害を立証するのは容易と思われます。)
特許は「諸刃の剣」的なところがあり、光学ガラスの場合は組成を開示することになるわけで、特許に近い組成で
一部を別の物質で置き換えるなどの方法で特許を回避して同等の性能が出せてしまう可能性があります。
ホタロンK-CaFK95に関しては1987年に発売されているので特許が成立していても既に権利が失われているので
今はどこでも作れるようになっています。(基本は出願から20年で権利消失)
手元にあるHOYAの1992年版光学ガラスカタログにFCD100が載っているのですが、ネットで「HOYA FCD100」で
検索してみたところ2007年以前ではヒットせず、2008年から天体望遠鏡の話でヒットしたので住田光学の特許に
抵触していたのかもしれません。
カメラ用レンズなどの場合はレンズデータが公開されているわけではないので検索に出てこなかっただけの
可能性もあります。
K-FIR98UV、K-FIR100UVの相当品が無いのは住田光学の特許があるからだと思われます。
(K-FIR100UVは2018年出願で権利化されています。)
原子吸光分光法などを使えば組成分析ができるので現物を手に入れられれば同じガラスを作ることが出来てしまいます。
実際には均質に製造するための条件が色々あると思いますので組成がわかっただけでは作れませんが目標の特性値だけから
始めるよりははるかに速いはずです。
(以前勤めていた会社の隣の建屋で光学ガラスの熔解をしており、酸素雰囲気で融かすとか金や白金の坩堝を使うとか
硝種によって色々な製造条件があると聞きました。)
マネされないようにするには組成を明示して特許で押さえるしかないわけです。
(組成分析ができるので特許侵害を立証するのは容易と思われます。)
特許は「諸刃の剣」的なところがあり、光学ガラスの場合は組成を開示することになるわけで、特許に近い組成で
一部を別の物質で置き換えるなどの方法で特許を回避して同等の性能が出せてしまう可能性があります。
ホタロンK-CaFK95に関しては1987年に発売されているので特許が成立していても既に権利が失われているので
今はどこでも作れるようになっています。(基本は出願から20年で権利消失)
手元にあるHOYAの1992年版光学ガラスカタログにFCD100が載っているのですが、ネットで「HOYA FCD100」で
検索してみたところ2007年以前ではヒットせず、2008年から天体望遠鏡の話でヒットしたので住田光学の特許に
抵触していたのかもしれません。
カメラ用レンズなどの場合はレンズデータが公開されているわけではないので検索に出てこなかっただけの
可能性もあります。
K-FIR98UV、K-FIR100UVの相当品が無いのは住田光学の特許があるからだと思われます。
(K-FIR100UVは2018年出願で権利化されています。)
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
昔から、お詳しい方に聞きたいと思っていながら、そんなことも知らないのかと言われそうで、恥ずかしくて聞けなかったことがあります。
私の頭の中では、高屈折率=低分散なのです。
シングルレンズをイメージすると、高屈折率のガラスである焦点距離のレンズを作れば、低屈折率のガラスよりよく曲がるので、Rの緩い(大きい)レンズでOKとなり、分散も抑えられるかもと思います。
超低分散とか特殊低分散というのは、そんな単純な話ではなく、屈折率と比較してどの程度?超低く、特殊になったらそう呼べるのでしょうか?
みなさん、知ってますか?
私の頭の中では、高屈折率=低分散なのです。
シングルレンズをイメージすると、高屈折率のガラスである焦点距離のレンズを作れば、低屈折率のガラスよりよく曲がるので、Rの緩い(大きい)レンズでOKとなり、分散も抑えられるかもと思います。
超低分散とか特殊低分散というのは、そんな単純な話ではなく、屈折率と比較してどの程度?超低く、特殊になったらそう呼べるのでしょうか?
みなさん、知ってますか?
プライベートメッセージです
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
あのニュートンさんは光分散の研究をしていながら、「分散の異なる硝子」が存在している事実を把握して無かった訳で、それで色消しレンズを発明し損ねたという話も有り、「分散の異なる硝子」というのはなかなかイメージし難いのかもしれないですが。
分散の定義は、(nF-nC)/(nd-1)ですから、ndの大きさに関わらずdから波長が変化した時の屈折率の変化率を表している訳であり、凸レンズを作った時、分散が大きい程、波長変化に対応する焦点距離の変化率が大きくなり、従って色収差が大きくなります。
分散が同じであれば、波長が変化した時の焦点距離の変化率は同じになる訳です。
ということでズバリ低分散硝子は色収差を小さく出来る訳です。
以上のように分散は屈折率(nd)の大小とは無関係な訳ですが、ここで実際に世の中に存在している硝子現物を見渡すと、ガラクマさんのイメージとは反対で、屈折率が高い(大きい)硝子程、分散も大きくなる傾向が有るようです。
従って屈折率の低い硝子の方が色収差は小さい傾向があります。
例えば、クリスタル硝子よりも窓ガラスの方が色収差は小さいですね。
(残念ながら高屈折率=低分散というのは私には理解出来ないです)
カメラレンズ等のレンズ硝材で欲しいのは上述傾向から外れた高屈折率、低分散の方向であり、その方向の光学硝子が開発されて来たのが光学硝子開発の歴史だと思います。
残念ながらED~SDの屈折率はまだまだ低く、今後、高屈折率ED~SD方向の開発が望まれているということですね。
なお、光学硝子では分散は、アッベ数:νd = 1/分散 = (nd-1)/(nF-nC):「分散の小ささ」で扱います。
νd =
F2:≒36、BK7:≒64、ED硝子:≒81、SD硝子:≒95、蛍石:≒95
です。
従来硝子の中ではBK7が最小レベルの分散であった訳ですから、蛍石、ED硝子、SD硝子が低分散であることは明確ですね。
以上でまだ疑問が有るようであれば是非返信お願いします。
後、異常部分分散性のお話もしたいのですが、今回は止めておきます。
分散の定義は、(nF-nC)/(nd-1)ですから、ndの大きさに関わらずdから波長が変化した時の屈折率の変化率を表している訳であり、凸レンズを作った時、分散が大きい程、波長変化に対応する焦点距離の変化率が大きくなり、従って色収差が大きくなります。
分散が同じであれば、波長が変化した時の焦点距離の変化率は同じになる訳です。
ということでズバリ低分散硝子は色収差を小さく出来る訳です。
以上のように分散は屈折率(nd)の大小とは無関係な訳ですが、ここで実際に世の中に存在している硝子現物を見渡すと、ガラクマさんのイメージとは反対で、屈折率が高い(大きい)硝子程、分散も大きくなる傾向が有るようです。
従って屈折率の低い硝子の方が色収差は小さい傾向があります。
例えば、クリスタル硝子よりも窓ガラスの方が色収差は小さいですね。
(残念ながら高屈折率=低分散というのは私には理解出来ないです)
カメラレンズ等のレンズ硝材で欲しいのは上述傾向から外れた高屈折率、低分散の方向であり、その方向の光学硝子が開発されて来たのが光学硝子開発の歴史だと思います。
残念ながらED~SDの屈折率はまだまだ低く、今後、高屈折率ED~SD方向の開発が望まれているということですね。
なお、光学硝子では分散は、アッベ数:νd = 1/分散 = (nd-1)/(nF-nC):「分散の小ささ」で扱います。
νd =
F2:≒36、BK7:≒64、ED硝子:≒81、SD硝子:≒95、蛍石:≒95
です。
従来硝子の中ではBK7が最小レベルの分散であった訳ですから、蛍石、ED硝子、SD硝子が低分散であることは明確ですね。
以上でまだ疑問が有るようであれば是非返信お願いします。
後、異常部分分散性のお話もしたいのですが、今回は止めておきます。
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
皆様こんばんは。
高屈折率ガラスの方が曲率を大きくできるので球面収差を小さくできるというのはガラクマ様の言われている通りです。
その代わり色収差出まくりになります。
分散の小さいガラスを凸レンズにして分散の大きい高屈折率レンズを凹レンズにすることで色収差と球面収差が
補正できたのはちょうどいい組み合わせのガラスがあったからですね。(アクロマートレンズ)
昔の光学設計者はNd-νd図を日本列島に見立てて太平洋側や日本海側などと呼んでいたという話を目にしたことがあります。
光学ガラスメーカー各社がNd-νd図を公開しています。
住田光学(ページを下げていくとありますが見づらい)
https://www.sumita-opt.co.jp/ja/download/
オハラ
https://staging.oharacorp.com/wp-conten ... 202304.pdf
HOYA
https://www.hoya-opticalworld.com/commo ... 150508.pdf
高屈折率で低分散というのは難しいようです。
種類が多いのでうまく組み合わせることで色消し(アクロマート)や超色消し(アポクロマート)が実現できる訳です。
実際にはカタログに記載されていてもほとんど流通していないガラスがあり入手困難なものが多数あるようです。
(某光学ガラスメーカーの営業の方から聞きました)
住田光学のNd-νd図から個別のガラスデータが見られます。
K-FIR100UVのデータシートを見て紫外から赤外まで(270nm~2,000nm)内部透過率がほぼ100%ということに驚きました。
高屈折率ガラスの方が曲率を大きくできるので球面収差を小さくできるというのはガラクマ様の言われている通りです。
その代わり色収差出まくりになります。
分散の小さいガラスを凸レンズにして分散の大きい高屈折率レンズを凹レンズにすることで色収差と球面収差が
補正できたのはちょうどいい組み合わせのガラスがあったからですね。(アクロマートレンズ)
昔の光学設計者はNd-νd図を日本列島に見立てて太平洋側や日本海側などと呼んでいたという話を目にしたことがあります。
光学ガラスメーカー各社がNd-νd図を公開しています。
住田光学(ページを下げていくとありますが見づらい)
https://www.sumita-opt.co.jp/ja/download/
オハラ
https://staging.oharacorp.com/wp-conten ... 202304.pdf
HOYA
https://www.hoya-opticalworld.com/commo ... 150508.pdf
高屈折率で低分散というのは難しいようです。
種類が多いのでうまく組み合わせることで色消し(アクロマート)や超色消し(アポクロマート)が実現できる訳です。
実際にはカタログに記載されていてもほとんど流通していないガラスがあり入手困難なものが多数あるようです。
(某光学ガラスメーカーの営業の方から聞きました)
住田光学のNd-νd図から個別のガラスデータが見られます。
K-FIR100UVのデータシートを見て紫外から赤外まで(270nm~2,000nm)内部透過率がほぼ100%ということに驚きました。
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
皆さんから教えて頂いたことはごもっともで、知っていたかもしれません。
ただ、改めてイメージしようとしても絵が頭に思い浮かびません。
私の屈折のイメージは、以下の図にとおりで、屈折率の高いガラス内では光の速度が遅く、屈折率が低い空気面に垂直に出ていきません。
これは屈折率が高いガラスほど空気との屈折率との差が大きいため曲がりが大きくなります。
分散のイメージは、私にとって図で赤と青との焦点位置の差(Frbとします)にあたります。
屈折率が高いガラスと低いガラスを使ったレンズで同じ焦点距離のレンズを作った場合、屈折率が高いレンズのほうが曲率の低く同じ焦点距離のレンズができます。
この曲率の違いによるもののほうが、波長ごとの屈折率の違いによるものより、Frbの大きさに寄与するものと考えておりました。
ですので、高屈折率=低分散とイメージ画像がありました。
どこが、間違っているのでしょうか? もっと納得しやすいイメージありますか?
ただ、改めてイメージしようとしても絵が頭に思い浮かびません。
私の屈折のイメージは、以下の図にとおりで、屈折率の高いガラス内では光の速度が遅く、屈折率が低い空気面に垂直に出ていきません。
これは屈折率が高いガラスほど空気との屈折率との差が大きいため曲がりが大きくなります。
分散のイメージは、私にとって図で赤と青との焦点位置の差(Frbとします)にあたります。
屈折率が高いガラスと低いガラスを使ったレンズで同じ焦点距離のレンズを作った場合、屈折率が高いレンズのほうが曲率の低く同じ焦点距離のレンズができます。
この曲率の違いによるもののほうが、波長ごとの屈折率の違いによるものより、Frbの大きさに寄与するものと考えておりました。
ですので、高屈折率=低分散とイメージ画像がありました。
どこが、間違っているのでしょうか? もっと納得しやすいイメージありますか?
プライベートメッセージです
Re: 超低分散硝子(特殊低分散硝子)材の現状
これより前に書かれている内容は合っていると思いますが、
その結論として書かれていると思われるこの部分は、
書かれている内容が正直私には理解出来ないです。
屈折率が高いと色収差が小さくなると結論していることになりますが、それは明らかに間違っています。
一度Face to Faceで議論しませんが?